SAP S/4HANA Cloud Public Edition導入の 
 クラウドマインドセットとクラウドアセスメントの重要性 

「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」の導入方法論として、特に最初の利用検討段階で何をしていくべきか・どう進めていくべきかについて、SAPシステム導入支援パートナーであるクレスコ・イー・ソリューションの見解と、ご支援内容についてご紹介します。

1.DXの基盤としてのSaaS型基幹システム

ITの役割について、以前は、業務プロセスの自動化・省力化にITを活用し効果を上げることでしたが、近年では、AI・クラウド・ロボット等のIT技術の急速な進歩により、業務・ビジネスの変革を促進する”変革のドライバー”としての期待が高まっています。

SAPクラウド統合基幹システム「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」は、ERPであることからIT調査会社ガートナーが提唱した考え方(2015)におけるモード1(従来型IT・守りのITとして記録するシステムの役割が大きい)と位置付けられますが、定期的なアップグレードやAI機能の搭載によりDXの要素も含んでいることからモード2(デジタルIT・攻めのITとしてデータを活用していく役割で迅速性が求められる)も持ち合わせています。
また、「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」は、競争力を生み出す周辺のDX領域(AI・LoBクラウド・ロボット等)の各種フロントシステムと連携するハブとして中心の基盤になることから、” DXのプラットフォームとしてのERP”といえます。
DXプラットフォームS/4HANA Cloud Public Edition

ERP(モード1)としての「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」はDXの基盤であり、周辺の各種フロントシステムと連携してデータ送受信することから、優れたデータモデル・シンプルなインタフェース・強靭さを有する必要があり、Fit to Standardによりクリーンコアであることが重要です。(Fit to StandardはERP導入や保守の費用低減だけが目的ではなく、DX推進の基盤として活用し続けるためにも重要)

しかし、Fit to Standardの「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」は現行システムを踏襲することにはならないので、現場の理解を得られにくいのが実情です。
なぜなら、ERPはデータドリブン経営を目指すことが理想ですが、現実には業務ユーザーが使うものなので業務メリットを優先して目の前の課題解決を優先しがちだからです。
「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」導入は、現行通りにならない・現場の理解が足りない・稼働直後は混乱が起きる等の懸念があることから、導入への強い意志と高度なリテラシーを持ち、全社的に合意が取れる企業のみがチャレンジできると弊社では考えています。

    ✓システムに合わせて業務を変える覚悟がある
    ✓SaaS型システムの特性・メリットを理解している
    ✓本稼働のタイミングでは機能的に不十分となることを受け入れられる(育てるシステム)

2.SAP S/4HANA Cloud Public Edition導入の構想策定よりも前にやっておくべきこと

パブリッククラウドERPを導入していくためには、クラウドマインドセットが重要です。
例えば、SaaS型ERPに対する理解・プロジェクトの目的や必要性の理解と合意・システムに合わせて業務が変わるので変化を恐れずにあるべき姿を追い求める考え方や姿勢を、プロジェクト関係者全員が身につけている必要があります。
ERPは経営ツールですが、要件定義は現場で行われるので、現場がプロジェクトの意義と具体的なイメージを深く理解・共感していないとトップの方針とは違うシステムができあがってしまう可能性があります。
よって、プロジェクト関係者が合意の上で、プロジェクト方針を自身のタスクレベルに落とし込めるようになる必要があります。
なお、クラウドマインドセットは、構想策定よりも前にやるべきです。
その理由は、パブリッククラウドERPの意思決定は上申や予算承認よりも前になるためです。
パブリッククラウドERPとプライベートクラウドERPではスコープ(ERPで実現する機能)が異なるため、途中で変更になると予算やスケジュールが大きく変わります。
クラウドマインドセットが不足していると「作りましょう」となるため、特に組織観点については業務観点よりも先に着手し、早めに業務ユーザーを巻き込みます。

(1)パブリッククラウドERPの導入手順「SAP Activate」

SAP社が提供する導入方法論の「SAP Activate」には、構想段階での対策が定義されています。
業務的に対応できるかについては、今の業務を維持できるかではなく、SAP Best PracticesをTo-Beとして標準プロセスを採用してビジネスを継続することができるかについて確認します。
組織的に対応できるかについては、今の業務と比較するのではなく、組織としてパブリッククラウドERPを活用していけるか、SAP Activateに沿ったプロジェクト進行ができるかについて確認します。
SAP Activate

(2)パブリッククラウドERP導入のクラウドアセスメント

SaaSを利用できる状態にあるか、チェックリストをベースにアセスメントを実施します。
①「業務・システム」、②「組織・人」の各観点から確認を行い不適合への対策を行います。
なお、①「業務・システム」の観点では確立された確認や対策の手法がありますが、②「組織・人」の観点では確立された確認や対策の手法がありません。
一例として、クラウドマインドセットのチェック、不足点があった場合の対策や再チェック、といったサイクルをチェンジプログラムとして計画・実行する手段がありますが、チェックにおける判断基準とサイクルの運用を仕組化しないと、形のないものであるため有耶無耶になってしまいます。
S/4HANA Cloud Public Editionクラウドアセスメント

3.「グランドデザインサービス for SAP S/4HANA Cloud Public Edition」のご紹介

パブリッククラウドERP導入のプロジェクト前にやるべきことを、クレスコ・イー・ソリューションの「グランドデザインサービス for SAP S/4HANA Cloud Public Edition」でご支援いたします。

(1)クラウドアセスメント

SaaSを利用できる状態にあるか、チェックリストをベースにアセスメントをします。
「業務・システム」「組織・人」の観点から確認を行い、NGの場合はプロジェクト開始前やプロジェクト中に解消します。

(a)「業務・システム」観点のクラウドアセスメント
SAP Best Practicesを活用して、世界標準の業務プロセスをどのようにして使うかというFit to Standardのアプローチで検討します。
パブリッククラウドERPで対応できない部分については、周辺システムとのインタフェースで対応、業務範囲を限定する等で検討します。

(b)「組織・人」観点のクラウドアセスメント
経営層・業務部門・IT部門の関係者を対象に、SaaSを利用できる状態にあるかについて、チェックリストをベースにアセスメントを実施します。
アセスメントの結果によっては、課題解消のためのワークショップを実施します。
SAP S/4HANA Cloud Public Edition クラウドアセスメント

(2)クラウドマインドセット醸成ワークショップ

「組織・人」観点の課題を解消するために、会社全体の向かっている方向を自分の業務タスクに落とし込み、経営視点で自分のタスク捉えることができるワークショップを実施します。
経営層・業務部門・IT部門のプロジェクト関係者参加の上、オンラインホワイトボードを用いたワークを行い、共通のゴールとなる未来像を描きます。
各自がアウトプットしパブリッククラウドERP導入方針等をまとめます。
S/4HANA Cloud Public Editionクラウドマインドセット醸成ワークショップ

(3)システム構想策定

クラウドアセスメントの結果をもとに、導入プロジェクトのスコープを決定し、「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」を中心に全体システム構成、予算取りのための概算見積他、稼働後の継続的な改善を見据えた中長期ロードマップの作製まで行います。

    ✓パブリッククラウドERPは導入後も育てていくシステムになるので、稼働時点では60%の達成度を目指す
    ✓稼働後の業務プロセスチェック、BTP機能開発などを予め計画に組み入れる
    ✓「組織・人」の変革もロードマップに組み入れる
S/4HANA Cloud Public Editionシステム構想策定


「グランドデザインサービス for SAP S/4HANA Cloud Public Edition」は、DXの推進を後押しするパブリッククラウドERPの導入を実現するために、クラウドアセスメントとクラウドマインドセット醸成ワークショップ、システム構想策定をご支援します。
「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」導入を始める前の準備のご相談など、どうぞお気軽にお問い合わせください。


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