導入事例
導入事例
合成ゴムや二次電池材料など、幅広い素材事業を展開する株式会社ENEOSマテリアル。デジタルを活用して現場主導で業務課題を解決する「デジタルコア人材育成プログラム」を2025年度にスタートした同社では、課題発見の方法論として「デザイン思考」に着目し、クレスコ・イー・ソリューション(以下、CeS)の支援のもと実践的なワークショップを開催。幅広い業務領域から参加した51名、20チームのメンバーがデザイン思考で200件を超える課題を抽出し、470件の改善のアイデアの中から25件の実現に取り組み、プログラム全体として、年間で約4,200時間分の業務削減効果が見込まれるなど、大きな成果が生まれている。
設立: 2021年5月(日本合成ゴム分割準備株式会社として設立)
2022年4月(株式会社ENEOSマテリアルに社名変更)
資本金: 10億円
従業員数: 1,414人(2025年4月時点)
所在地: 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター
事業内容: 合成ゴム、合成樹脂、その他の化学工業製品の製造・加工・販売
ENEOSマテリアルは、ENEOSグループのDX・デジタル化の方針に基づき、各部門でデジタル活用を推進している。その中核となる施策として、2025年度にスタートしたのが「デジタルコア人材育成プログラム」だ。経営管理本部 デジタル統括部 デジタル推進グループ グループマネージャーの髙橋岳大氏は、プログラムの背景を次のように説明する。
「近年、IT人材の不足が深刻化する一方で、ツールの進化によってITが専門でなくても業務の現場でデジタルを活用できる環境が整いつつあります。このプログラムの目的は、業務課題を自ら発見してデジタルを活用して課題を解決できる人材を育成することにあります」
プログラムの推進にあたって「課題発見力」が重要だと考えた同社は、その方法論としてデザイン思考に着目。SAP人事システムの領域で取引実績のあったCeSのデザイン思考の取り組みを知り、デジタル推進グループの約10名のメンバーがトライアルでワークショップを体験することとなった。経営管理本部 デジタル統括部 デジタル統括グループ 兼 デジタル推進グループの中村圭甫氏は次のように話す。
「日常の業務では感覚的に進めている課題整理を、発散と収束のプロセスとして体系化されている手法を用いて考えるデザイン思考は非常に新鮮に映りました。CeSのファシリテーターが丁寧に進行するとともに、各グループに担当がつく手厚い支援体制には安心感がありました」
少人数でのトライアルを経てその有用性を確認した同社は、全社向けのプログラムの中でワークショップを展開するにあたり、正式にCeSに支援を依頼した。髙橋氏は「デザイン思考のフレームワークだけでなく、終了後のフォローも見据えたご提案をいただき、パートナーとしての期待が高まりました」と話す。
2025年度の5月から12月にかけて実施したプログラムでは、経営企画、営業、人事、品質管理、研究開発などの部門から公募や推薦で51名の参加者を選定し、20チームに分かれて活動を開始した。
最初の2か月では、別ベンダーによるeラーニングによる基礎学習とローコードツールの技術トレーニングを実施。
その後、7月から9月の期間でデザイン思考のワークショップを展開し、各チームが業務課題の抽出に取り組んだ。10月以降は各チームで業務アプリを開発しながら課題解決に取り組み、12月には最終発表会を開催した。
ワークショップでは、デザイン思考の5つのプロセス(共感、問題定義、発想、プロトタイプ、テスト)に沿って解決すべき課題の抽出、テーマの選定が進められたが、その過程はチームごとに異なるものだった。
「最初から明確な課題意識を持っていたチームもあれば、“自分たちの課題は何か”から考えるチームもありました。そこでデジタル推進グループのメンバーとCeSのファシリテーターが壁打ち相手となって、個別に支援しました」(髙橋氏)
人事チームに参加したN氏とT氏も、テーマ選定には時間を要したという。N氏は「人事チーム内でも参加者の担当業務はそれぞれ異なるので、現状で改善が必要な業務を整理するところから始めました」と話す。2025年入社のT氏も「当初はまだ業務理解が浅く苦労しましたが、議論を重ねた結果、手作業が当たり前だった業務をデジタルで改善できるという考え方にたどり着きました」と振り返る。最終的に人事チームは、新卒採用における進捗管理の効率化と情報共有の仕組みづくりをテーマに選定し、Excel集計が中心だった業務の改善に着手した。
12月の最終発表会はポスターセッション形式を採用し、各チームがポスターを掲示してプレゼンを実施した。デジタル推進グループは、質問やコメントを書き込める付箋や「いいね」シールを用意し、参加者同士が気軽に交流できる仕掛けを設けた 。中村氏は「双方向で自由にコミュニケーションできるポスターセッション形式を選んだことで、活気あふれる発表会になりました」と話す。
20チームの成果が並んだ会場には同社の経営陣も訪れ、人事チームの発表にも多くの来場者が集まった。T氏は「人事以外の領域を担当する役員や部長の方々からも質問をいただき、関心の高さを感じました」と話す。同様にN氏も「他のチームの発表を見ることで新たな学びを得ることができました」と振り返る。発表内容は参加者全員の投票によって評価し、金賞・銀賞・銅賞のほか、社長賞・副社長賞、加えてチームの強みを評価する特別賞が授与された。その中で人事チームは「ビジネス・インパクト賞」を受賞した。
プログラム全体の成果として、定量面では20チームの取り組みによって、年間で約4,200時間分の業務削減効果が生まれると試算。定性面でも、オペレーション品質の向上や、属人化の解消などの成果が見込まれている。
具体的には、人事チームでは新卒採用の進捗をBIツールで可視化し、面接の状況などをリアルタイムで把握できるようになった。当初は半年で15時間程度としていた業務削減効果も、ツールの機能拡張によって現在は35時間程度まで拡大し、手作業によるミスやタイムラグも解消されている。デジタルに対する意識の変化も生まれ、N氏は「新卒採用以外のテーマでも、ツールを使って改善に取り組む文化が根付き始めています」と成果を口にする。
デザイン思考のワークショップの過程では、20チームで約200件の課題が抽出され、470件もの改善のアイデアが創出されたという。その中から25件については、実現に向けた取り組みが進められている。髙橋氏は「ポスターセッションでの発表は、これらの一部に過ぎません。課題の本質に近づくCeSのファシリテーターからのフィードバックがなければ、こうした潜在的な課題に気づくことはなかったはずです」と手応えを話す。
同様に中村氏もCeSの支援について次のように評価する。
「初めての取り組みだけに、参加者をどのようにリードするかなど運営側の悩みも多くありましたが、CeSから明確な指針や選択肢を示していただけたおかげで、プログラム全体を成功に導くことができました」
「デジタルコア人材育成プログラム」は2026年度も継続して展開している。初年度の成果を踏まえ、現在は複数年を見据えたプログラム構成に刷新。1年目は基礎習得、2年目は自律的な実践、3年目は周囲を巻き込む推進役へと、段階的に成長できる構成とした。2026年度は新規参加者の約20名に加え、継続参加者も次の課題に取り組んでいる。
運営側としても、社内に広く認知されつつあるデザイン思考を活用しながら、プログラムの提供内容をさらにアップデートしていく考えで、この中で同社がCeSにかける期待も大きい。
「デザイン思考は一度学べば終わりではなく、継続的な実践が重要です。だからこそ、議論をリードし伴走してくれるCeSの存在を心強く感じています。今後も二人三脚で、デザイン思考とデジタル活用を全社に定着させていきたいと考えています」(髙橋氏)
今回の参加者はeラーニングでデザイン思考の基礎を学んだうえでワークショップに臨みましたが、実践は初めての方も多かったため、カリキュラムはオーソドックスな構成としました。テーマ選定に苦戦しているチームに対しては、CeSのファシリテーターが「壁打ち相手」となって、情報整理を支援することを心がけました。
ポスターセッションのフォーマットについてもCeSが作成を支援し、課題や背景、解決策のアピールポイントなどを整理しやすいように工夫しました。また、運営側に対してもプログラム全体の推進を支える形で伴走しました。最終的に、各チームが成果物の作成までやり遂げることができ、デジタル人材育成にデザイン思考を取り入れた取り組みとして、モデルケースになったと感じています。
デザイン思考を身につけDXを推進する人材の育成・組織作りについて、ご説明と事例の資料一式をダウンロードいただけます。