情報発信
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「あ〜、やっちゃったな」 ERP稼働後たった2年でシステムリプレイスが検討され始め、今のシステムに掛けたコストを考えた時に頭に浮かんだ言葉だ。
ERP導入中には何の問題も感じていなかったし、他の方法もあるだろうけど、できあがるものに大差がないと勝手に思っていた。
「なぜこうなったのだろう…」
とある物流システム担当者の苦悩とたどり着いた結論とは?
2年前、ERPをビッグバン導入。 入出庫情報を即座にERPに反映させ在庫情報をリアルにキャッチできるように、ハンディターミナルでのバーコードスキャン入力システムをアドオン構築した。
アメリカのERPサーバへの直結端末だが、本稼働前のテストでは問題なく処理ができていた。倉庫業務に支障は出ないはずだったのだ。しかし…
多少の混乱は予期していたが、まさか倉庫のハンディターミナルが使われなくなるという事態は全くの想定外だった。ERP導入目的の1つであるリアルな情報把握ができる仕組みを作ったはずなのに、1日の終わりに作業日報的にバッチ入力されてしまっている。
「なぜこうなったのだろう…」
聞き取り調査をすると、1処理に必要な画面数の多さもあるが、その最大の要因はハンディターミナルのレスポンスの悪さだったのだ。確かに、出荷ピーク時に1ケース処理するのに10秒以上掛かっていては作業が滞ってしまう。1箱の処理毎にシステム応答待ちが入っていてはお客様への出荷時間に間に合わない。納品遅延は信用問題になってしまうので、現場は仕方なく後処理でバッチ入力をしていたのだ。倉庫作業が多忙な時には2〜3日分溜め込んだデータの処理を行っている様だ。
製品の売れ行きは好調で、仕入れの品数も増やす予定になっている。現行の倉庫では手狭で、拡張も考えなければならない。 倉庫業務自体の外部委託が選択肢の1つになったこともあり、倉庫システムの作り直しが検討課題になった。
外部の業者に今のハンディターミナルを使ってもらい、ERP画面が操作できる状態にしてしまうのはセキュリティの観点からNG。相当なコストを掛けてアドオン開発したモバイル入力システムなのに、残念ながら殆ど使われずに終わることに・・・
急激な国内売り上げの伸びのお陰で倉庫拡張予算としてシステム改修許可が取れた。 本来だったら日本法人のシステム改修予算は簡単に認められないのでラッキーなタイミングであった。
2年前なぜこんな無駄な投資をしてしまったのかを自問してみると、3つ原因が考えられた。
? ERP導入だから足りない機能はERPに作り込むものだと思い込んでいた
?周辺システム全体像をとらえていなかった
? テストで問題なかったのは、稼働後のピーク時が想定できてなかったから
?ERP稼働が最優先のスケジュールで倉庫システムは動けばよい
? ビジネスの変化に対応できるシステムという観点がなかった
?今の課題解決はもちろんだが、今後の自社の倉庫の未来像を考えなかった
結局、倉庫業務を外部委託して、業者システムとERPをEDI的に接続した。かなりの額を投資したハンディターミナルシステムだったが、3年ももたなかったわけだ。新システム連携では、ERPからの指示データに対する実績応答が自動的にやりとりされて、ERPで在庫が把握できる様になった。
アドオンではなく標準インタフェース機能で接続したので、翌年度に別の業者に接続替えをした際にも手間がかからなかった。切り貼りしやすいシステム構成が『変化への対応』の答えとなったのだ。?
ERPでは足りない機能、そもそもない機能をERPにアドオン実装したのでは、『変化への対応』に多くの時間と費用が必要になる。 今現在の倉庫業務に適したやり方、今まで通りのやり方、そして今のシステムが、来年、または3年後も最適とは限らない。
場当たり的なアドオン開発をして、ビジネス環境の変化だけではなく、システム環境の進化にも対応しづらい設計になっていないか? 実際の開発に踏切る前に、中期的な視野で改めて考えてみるのは無駄な工数ではない。
その実例の解説をコラムで紹介しています。