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S/4の導入・移行

【SAP S/4HANA移行】飛島建設株式会社様:SAP ECC 6.0 からSAP S/4HANAに ブラウンフィールド方式で移行

 ~SAP ECC 6.0 からSAP S/4HANAに ブラウンフィールド方式で移行~ 
 「トビシマDX」を支える次世代のシステム基盤への移行を13カ月で完了 

卓越した建築技術と土木技術で140年以上にわたって日本の社会インフラを支え続ける飛島建設株式会社。「トビシマDX」を掲げて次世代型のビジネスプロセスへの転換を推し進める同社は、サポートの終了が迫るSAP ECC 6.0の後継システムとしてSAP S/4HANA®への移行を決断。クレスコ・イー・ソリューションをパートナーに指名し、Unicode化を含めて財務会計(FI)、管理会計(CO)、販売管理(SD)、在庫購買管理(MM)、プロジェクト管理(PS)の5つのモジュールの移行を13カ月で完了した。移行時は複数回のリハーサルを実施して手順の最適化を図り、SAP S/4HANAの本番環境への切り替えを4日間のダウンタイムで完了するなど、業務への影響を最小限にとどめている。

飛島建設株式会社

創業:1883年
設立:1947年3月
資本金:55億1,994万円(2024年3月31日現在)
売上高:1,132億円(2022年度)
従業員数:1,115名(2024年3月31日現在)
所在地:東京都港区港南1-8-15
事業内容:土木事業と建築事業を主要事業とする総合建設業

【 課 題 】

❓ SAP ECC 6.0のサポート終了を控え、後継システムの検討が急務
❓ 現行システムの機能を継続利用するための確実かつ短期間での移行
❓ 業務への影響を最小化するためのシステム移行時のダウンタイム短縮

【 解 決 】

✅ 安定性と信頼性があり、業務の現場が長年の利用で慣れ親しんできたことを踏まえて、後継システムとしてSAP S/4HANAを採用
✅「SAP S/4HANA移行サービス MOA」を活用したブラウンフィールド方式で、5つのモジュールの移行を13カ月で完了
✅ 手順の最適化を図り、4日間のダウンタイムでSAP S/4HANAの本番環境へ切り替え

飛島建設株式会社事例

次世代型ビジネスプロセスを支える
新たな基幹システムへの移行

 中長期経営ビジョンとして「New Business Contractor」を掲げ、プラットフォーム・カンパニーを目指す飛島建設株式会社。同社は現在、このビジョンの実現に向けて、最新のデジタルテクノロジーを駆使した次世代型のビジネスプロセスで競争力を高めていく「トビシマDX」を全社で推進している。

 この新たなビジネスプロセスを支える重要な基盤となるのが、広範な業務を司る基幹システムだ。同社は2001年にSAP R/3で事業基盤を構築後、SAP ECC 6.0へのアップグレード、機能拡張プログラムの適用、クラウドインフラへの移行などを行いながら、20年以上にわたって運用を続けてきた。

 しかし、長年におよぶ運用の中でシステムの老朽化が進み、2027年末のSAP ECC 6.0のサポート終了も迫ってきたことから、後継システムの検討に着手した同社はSAP S/4HANAへの移行を決断。移行に際しては、現行システムで実装している機能をSAP S/4HANAでそのまま利用可能にする「ブラウンフィールド方式」を採用した。経営本部 イノベーション推進部 システムG 担当部長の山田勝巳氏は次のように話す。

 「SAP ECC 6.0は安定性と信頼性があり、業務の現場が長年の利用で慣れ親しんできたことを踏まえて、後継システムとしてSAP S/4HANAを選定しました。ただし、既存のシステムは建設業界特有の要件に基づくアドオンや周辺システムとの連携も多いことから、既存の機能とデータの継続利用を基本方針とし、移行時のリスクや新たな基幹システムの早期立ち上げも考慮して、ブラウンフィールド方式による移行を決定しました」

 SAP S/4HANAへの移行を決断した背景には、業務のデジタル化という課題もあった。同社では紙伝票を使った業務が多く、特にコロナ禍のリモートワークの中ではさまざまな課題が指摘されるようになっていた。経営本部 イノベーション推進部 システムG 課長の稲葉慎氏は「SAP ECC 6.0のフロントエンドで利用していたNotesのサポート終了を機にローコード開発ツールのOutSystemsへの移行を決めたのも、デジタル化へ向けた施策の一環です」と振り返る。

 それに併せて業務プロセスの見直しも行い、それまでNotesで実現していた売上入金の実績管理と売上管理の2つの機能については、SAP S/4HANAのアドオンで対応する方針とした。


新旧比較テストによる修正箇所の特定、
複数回の入念なリハーサルによって
想定内のダウンタイムで移行を完了

 SAP S/4HANAへの確実かつ短期間での移行を実現するための手段として、飛島建設はクレスコ・イー・ソリューションの「SAP S/4HANA移行サービス MOA」を採用。

 「クレスコ・イー・ソリューションには2017年からSAP ECC 6.0の運用保守をお願いしてきた経緯があり、2020年に経費精算システムの『SAP Concur』を導入した際も、SAP専業ベンダーとしての高度な知見を発揮してくれました。ブラウンフィールド方式によるSAP S/4HANAへの移行提案も、過去の実績も含めて十分に信頼できると判断しました」(山田氏)

 2023年1月にキックオフした移行プロジェクトでは、まず初期段階の準備フェーズで不要な機能を洗い出して移行対象を削減し、短期移行とコストの抑制を実現するための作業のシンプル化を図った。また、今回の移行ではUnicode化も実施したことから、帳票のフォーマットが崩れる、あるいは他システムとの連携ができなくなるリスクもあったという。

 「移行対象となる機能は700本近くあったことから、ここではクレスコ・イー・ソリューションに新旧比較テストで修正箇所を洗い出してもらって、帳票などを従来の形式で出力するための修正対応などをお願いしました」(稲葉氏)

 さらに大きな課題となったのがSAP S/4HANAの本番環境へ切り替える際のダウンタイムの短縮だ。当初は3日間のダウンタイムと予備日の合計4日間24時間体制(96時間)での切り替えを想定していたが、1回目のリハーサルで予期せぬエラーが発生し、切り替えに106時間を要する結果となった。そこで、データのクレンジング、事前の修正作業の徹底、移行手順の習熟、インフラの設定変更など、ダウンタイムを最適化するための入念な準備を行い、2回目と3回目のリハーサルで96時間以内に短縮できることを確認してから本番に臨んだ。

 「クレスコ・イー・ソリューションの柔軟な対応により、実際の本番環境への切り替えはリハーサルより2時間短い94時間のダウンタイムで完了することができました。3連休を利用しましたので、業務を止めた実質的なダウンタイムは1日だけです。こうして、プロジェクトのキックオフから13カ月後の2024年2月にはSAP S/4HANAの本稼働を開始することができ、業務の現場への影響も最小限にとどめることができました」(山田氏)


SAP S/4HANAへの移行により
バッチ処理時間の短縮ほか
紙業務の削減などの成果も獲得

 ブラウンフィールド方式によって使い慣れたシステムを継承できたことで、SAP S/4HANAの本番環境への移行後もユーザーはこれまで通りに業務を行うことができ、新たな基幹システムは安定稼働を続けている。

 「クレスコ・イー・ソリューションの堅実なプロジェクトマネジメントのおかげで、移行期間やコストは計画の範囲内に収めることができました。本格的な効果測定は年度末の決算を終えてからとなりますが、今回のプロジェクトの成果は社内でも評価されています」(山田氏)

 SAP S/4HANAがもたらした効果としては、一部のバッチ処理でパフォーマンスが向上し、処理時間は従来の3分の1程度に短縮されているという。

 また既存のNotesからの機能移行については、会計機能の一部がデジタル化されたことで紙業務の削減につながっている。別のパートナーと実施しているNotesの機能移行は、段階を追って長期的に進めていく計画で、会計領域を中心とした機能は2025年度内、その他の機能についても2026年度内での完了を目指している。

 「Notesからの機能移行が進めば、さらなるペーパーレス化、業務の効率化が実現し、紙のコスト削減やリモートワークの環境整備といった成果が期待できます」(稲葉氏)


「トビシマDX」の推進を支える
SAP S/4HANAへの投資価値の向上

 今後について、飛島建設では今回のプロジェクトのスコープから除外した新規の機能追加や、稼働後に見えてきた残課題への対応は、引き続きクレスコ・イー・ソリューションに支援を要請し、2024年8月の終了を目指してプロジェクトを継続している。

 「当社からの問い合わせや修正依頼などに対するクレスコ・イー・ソリューションの迅速な対応は、SAP S/4HANA移行プロジェクトの大きな成功要因です。今後、紙運用のデジタル化や周辺システムの整備が進むと、SAP S/4HANAは『トビシマDX』を支えるより重要なデータ基盤となります。次のフェーズでは、蓄積されたデータの一元管理、可視化、分析など、SAP S/4HANAへの投資価値を高めるためにクレスコ・イー・ソリューションのさらなる支援を期待しています」(山田氏)

 人々の暮らしや社会を支える建設業界のイノベーションの実現に向けて、さまざまな施策に取り組む飛島建設のビジネスにおいて、SAP S/4HANAで構築した新たな基幹システムはますます重要な役割を果たしていくはずだ。

飛島建設株式会社事例

飛島建設株式会社 経営本部
イノベーション推進部 システムG
担当部長 山田 勝巳 氏

飛島建設株式会社 経営本部
イノベーション推進部 システムG
課長 稲葉 慎 氏

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「Panayaアセスメント、SAP S/4HANA移行、SAP ECC6.0標準保守延長EhP適用、S/4バージョンアップ」