~SAP S/4HANA Cloudに移行し中長期的な成長基盤を再構築~
紙の電子化による経理処理の効率化など全社の業務プロセスの標準化を推進

上下水道施設など水処理施設の設計・施工・メンテナンス・運転管理を一貫して手がける総合水インフラ企業として、地域社会を支え続ける株式会社フソウ。2015年から運用するSAP ECC 6.0のサポート終了が迫る中、後継システムを検討していた同社では、SAPのクラウドオファリング「RISE with SAP」を採用し、クレスコ・イー・ソリューションの支援を通じてSAP S/4HANA Cloudへの移行を実現。これにより、手作業や紙の帳票に依存していた経理処理が効率化するなど、さまざまな成果を獲得している。今後は経営の高度化に向けたデータの分析活用など、さらなる取り組みを進めていく予定だ。

株式会社フソウ

設立:1946年8月14日
資本金:30億円
売上高:500億円
従業員数:687名
所在地:東京都中央区日本橋室町2丁目3番1号
事業内容:上下水道資機材の製造・販売、水処理施設の設計・施工・メンテナンス・運転管理

【 課 題 】

❎ 2025年末にサポートが終了するSAP ECC 6.0の後継システムの検討が急務
❎ SAP S/4HANAが新たな成長基盤として相応しいかの判断材料が必要
❎ 手作業や紙の帳票が介在し、業務の効率化を妨げる業務環境

【 解 決 】

✅ クラウドのメリットを活かしたセキュアで拡張性に優れた事業基盤を再構築
✅ ロードマップでSAP S/4HANAが持続的に利活用できる基盤であることを確認
✅ UIの改善や紙の電子化によって業務効率が向上。今後も継続的な改善を推進

SAP S/4HANA Cloudに移行し中長期的な成長基盤を再構築

RISE with SAPの採用による
SAP S/4HANA Cloudへの移行メリット

 1946年の創業以来、「水と共に生きる」を企業理念に掲げ、上下水道資機材の製造・販売、水処理施設の設計・施工・メンテナンス・運転管理などの事業を通じて、持続可能な地域社会の発展に貢献する株式会社フソウ。事業環境の変化に柔軟に対応できる強固な経営体制の維持を優先課題と考える同社にとって、膨大なデータ資産が蓄積された基幹システムは重要な事業基盤の1つである。

 しかし、2015年に導入したSAP ECC 6.0の運用においては、時間が経過する中でいくつかの課題が指摘されるようになっていたと話すのは、フソウホールディングス株式会社 グループ情報システム部 部長の三木綾香氏だ。

「SAP ECC 6.0については2025年末のサポート終了が迫っていることに加えて、業務プロセスの随所で手作業や紙の帳票が介在する以前の環境では、業務の効率化やデータ活用などの観点でさまざまな課題があり、後継システムの検討が急務となっていました」

 こうした中、SAP ECC 6.0の運用支援を通じて同社のIT環境をよく知るクレスコ・イー・ソリューションから提案を受けたのが、RISE with SAPの採用によるSAP S/4HANA Cloudへの移行だった。

「当社では、SAP ECC 6.0の後継システムは単なるバージョンアップではなく、情報の可視化、業務生産性の向上、業務の平準化を支える新たな事業基盤の再構築プロジェクトとして位置づけていました。その点において、業務プロセスの標準化・効率化、データを活用した高度な意思決定を支援してくれるSAP S/4HANA Cloudは当社が求める要件を満たしており、クラウドのメリットを最大限に享受できるRISE with SAPのオファリングも魅力的なものでした」(三木氏)

 同社では、それまでもSAP ECC 6.0の運用でクラウドを利用していたが、この管理負荷も改善課題の1つだったという。SAP S/4HANA Cloudが稼働するクラウドインフラも一貫してサポートしてくれるRISE with SAPであれば、こうした負荷を解消するとともに、セキュアで安定した事業基盤を構築できる点は大きなメリットだった。

中長期的なロードマップを策定し
SAP S/4HANA Cloudが持続的に利活用できる基盤と判断

 移行を決定する過程においては、持続的な成長基盤としてのSAP S/4HANA Cloudの価値を検証する必要があった。

 2021年9月にスタートしたプロジェクトでは、全社の各業務部門からメンバーを選抜し、それぞれの課題をチーム内で共有しながら、クレスコ・イー・ソリューションの「SAP S/4HANAグランドデザインサービス」を活用して、フソウにおける共通のゴールとなるビッグピクチャー(未来像)を作成。

 さらに、課題解決のための機能実装を短期・中期・長期のフェーズに分けたロードマップ上で可視化した結果、SAP S/4HANA Cloudの利活用の価値を確認できたことから、2022年9月から具体的な移行に着手した。

 移行の過程では、アドオンプログラムの修正箇所の特定や効率的な修正を支援する「Panaya」を活用するなどして、1年後の2023年8月に予定通りにカットオーバーを迎えることができた。ここでは入念なリハーサルを繰り返すと同時に、クレスコ・イー・ソリューションの「SAP S/4HANA移行サービスMOA」を活用することで、本番環境切り替え時のダウンタイムは初回リハーサル時の110時間から88時間まで短縮できたという。

「プロジェクトの期間中は、特に業務のパフォーマンスに直結するUIの品質などについて入念な確認作業を行いました。この他にも、マニュアルの変更など細かな作業が発生するたびにクレスコ・イー・ソリューションに柔軟に対応いただけたことは、プロジェクトの大きな成功要因だったと思います」(三木氏)

受注案件の登録工数の20%削減や
紙の電子化による業務効率の向上

 SAP S/4HANA Cloudへの移行から約3カ月が経過した現在、すでに業務の現場ではさまざまな改善効果が生まれている。流通部門のマネージャーを務める株式会社フソウ 環境事業部 商品流通本部 業務部長の岡田悠輝氏は、受注登録作業の効率化を例に次のように話す。

「流通部門で行う受注案件の登録作業の工数を試算したところ、SAP S/4HANA Cloudへの移行によって約20%の時間が削減できる見込みです。この効率化は、入力画面などUIの改善効果が大きいと考えています」

 今回のプロジェクトでは、UI改善策の一環としてさまざまな処理をSAP S/4HANA Cloudの画面で集中管理できるようにした。この受注登録の画面も、クレスコ・イー・ソリューションの支援を通じて作り上げたものだと岡田氏は明かす。

 このように入力作業を1つの画面で完結できる仕組みは、業務効率化の重要な要件となる。そのメリットを経理帳票の処理でも実現できたと評価するのは、株式会社フソウ 管理本部 経理部 経理課長の藤野誠氏だ。日計表の作成において、これまで経理部ではSAP ECC 6.0から必要なデータを抽出し、紙帳票も含めて手作業で集計を行っていた。SAP S/4HANA Cloudによって紙業務が電子化された現在は、この一連の作業がすべて自動化されたという。

「その結果、従来は取引先残高一覧(売掛金・買掛金・工事未払金)のデータ抽出に各科目で60分かかっていたのが、10分に短縮されました。データの抽出自体は30秒くらいで、内容の確認時間も含めて10分です。つまりデータの抽出だけでなく、一覧表を作るまでの全工程の所用時間を80%以上削減できたということです」

 同様に、株式会社フソウ 中国支店 中国総務係 係長の大久保進氏も次のように話す。

「私は地方拠点の経理を担当しているので、紙の領収書の管理といった細かな業務が多いのですが、それらをすべて1つのシステム内で完結できるようになった点は大きいです。日計表の取りまとめなども、以前は別作業で行っていたのが一気通貫で行えるようになりました。正確なベンチマークはこれからですが、個人的な体感では半分くらいの時間に短縮したという印象です」

RISE with SAPのオファリングを活用した
成長基盤のさらなる高度化

 従来の業務機能の移行を完了し、フソウにおけるSAP S/4HANA Cloudの活用は、今後新たなフェーズに入っていく。三木氏は「2026年までをターゲットに策定したビッグピクチャーの次のフェーズにおいても、周辺システムとの連携など解決しなければならない多くの課題があります」と見通しを語る。

 一方で岡田氏も「すでに具体的な成果が生まれていることについては、手応えを感じています。これからは業務プロセスのさらなる標準化にも取り組んでいく考えです。SAP S/4HANA Cloudはそれを可能にするシステムです。これが実現できるかどうかは、まさに私たちの覚悟にかかっています」と意欲を語る。

 この他にも、同社ではSAP Analytics Cloudを活用した高度なデータ分析、SAP FioriによるさらなるUI改善なども検討しているという。「SAP ECC 6.0の時はサポートがメインでしたが、これからはRISE with SAPのオファリングを活用した提案など、クレスコ・イー・ソリューションにはさらなる支援をお願いしたいと考えています」と期待を語る三木氏。SAP S/4HANA Cloudで再構築した新たな成長基盤は、社内業務を平準化し、より顧客志向のサービス展開を目指すフソウの事業にさまざまな価値を提供していくはずだ。

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