【課題】
✓ 工場からのデータ入力には、工場の業務プロセスに影響しないよう、全工場で統一したExcelレイアウトを簡単な操作で使用することが必須条件
✓ SAP S/4HANAにて管理している品目コードなどのマスタデータをExcelに取込むことでマスタデータを一元化したい
✓ 追加のアドオンプログラムを作ることなく、データ連携にはSAP S/4HANAの標準インターフェースを活用したい
✓ SAP S/4HANAの本稼働に間に合わせるため、要件定義から結合テストまでを6ヶ月以内に完了しなければならない
【解決】
◎ ExcelとSAP S/4HANAとの双方向(マスタデータおよび指示データの取込み、実績データの登録)によるデータ連携を実現
◎ Excel上でSAP S/4HANAへの権限チェックおよびデータ入力チェックを実施して、整合性のあるデータをリアルタイムで連携
◎ データ連携の仕組みにSAP標準インターフェースのBAPIを利用してアドオンを削減
◎ SAP S/4HANAとデータ連携の両領域の知見による的確な技術支援のもと、お客様との共同作業によるプロジェクトを実施
◆ A社の課題と「ConnectPlusGT」採用の背景
長年SAP ERPを使用するA社は、経営基盤の再構築などを目的にSAP S/4HANAを導入することになり、これを機に、労働集約的な単純作業から価値向上に質する、より付加価値の高い業務と業務自体の高度化のためにリソースと投資をシフトしていくことを目指し、現行業務の姿をゼロから見つめ直すことになった。
生産領域では、この取り組みを通して現状業務の課題を洗い出し解決施策の議論を進めてきたが、各製造工場からあがった課題の1つに「SAPシステムへのデータ入力・操作に多くの工数を費やしている」ということがあった。
そこで、工場から簡単な操作で迅速かつ正確にデータを入力してもらうために、工場の業務プロセスに影響しないよう、以前から工場で実績値などの管理に使用していたExcelレイアウトを全工場で統一したフロント画面とし、入力されたデータをSAP S/4HANAに連携させる仕組みを検討。いくつかのデータ連携製品の中から、ExcelとSAP S/4HANAを双方向かつリアルタイムで連携する機能が搭載された、SAP ERP・SAP S/4HANA専用のシステム連携管理ツール「ConnectPlusGT」を採用した。
その結果、SAP S/4HANAとExcelシート間での指示/実績データの連携を「ConnectPlusGT」で構築することで、各工場でのシステム入力業務に要する単純作業を削減し、作業の効率化と標準化の推進を実現した。
◆ ExcelとSAP生産管理モジュール(PP)とのデータ連携プロジェクトの進め方とデータ連携の仕組み
キックオフミーティング後は、製品トレーニング、要件定義、基本設計、環境構築、開発(製品スクリプトとExcel機能の開発、テスト)、実践演習、技術支援という流れで進んだ。
必要な機能は、フロント画面のExcelを介してSAP S/4HANAとの問合せ応答型で入力する生産管理や在庫移動などの実績値を、SAP生産管理モジュール(PP)の製造指図に登録する仕組みなどで7種あった。設定は、最も複雑な機能1種を「ConnectPlusGT」の実践演習としてクレスコ・イー・ソリューションが実施し、残りの6種はA社が主体となり実施。その間、クレスコ・イー・ソリューションは本稼働まで技術支援を実施した。
処理フローとしては以下の通り。
Excelにて選択条件を入力して実行すると、「ConnectPlusGT」のBAPIアダプタ機能で、SAP S/4HANAから品目コードのマスタデータを含む製造指図に関するデータを取り込みExcelに表示。フロント画面のExcelにて実績値などの追加や、変更データを入力。ExcelにてSAP S/4HANA側との整合性を確認する入力チェックを実施後、SAP S/4HANAに送信すると、「ConnectPlusGT」のBAPIアダプタ機能がSAP S/4HANAに実績データを登録、更新。Excelには、正常に登録されたかどうか、登録された伝票番号の結果が表示される。
◆ 導入前の期待と導入後の効果
このデータ連携の構築は、SAP S/4HANAの本稼働に間に合わせる必要があり、要件定義から結合テストまでを6ヶ月以内に完了する必要があった。そのような条件の中で、要件を実現するためのBAPIパラメータ設定の動作検証やBAPIエラー対応、Excelのパフォーマンスチューニングに時間を要した局面もあったが、プロジェクトを5カ月で完了することができ、当初の予定通りにSAP S/4HANA本稼働と同時に工場で使い始めることができた。
プロジェクトを順調に進められた理由は、必要な機能が「ConnectPlusGT」に搭載されていたこと、SAP ERP・SAP S/4HANAとデータ連携の両方に技術力のあるコンサルタントによる的確なサポートの他、A社の要件決めが明確だったことに加え、高い技術力と吸収力もあいまったためと導入支援メンバーは振り返る。
また、導入前にA社が「ConnectPlusGT」に期待していたことは、利用者の負担にならない簡単な操作でExcelとSAP S/4HANAのデータ連携を双方向かつリアルタイムで実現する他、SAP S/4HANAと外部システムとの連携にSAP標準インターフェースのBAPIを利用することによるアドオン削減、内製で設定できるなどであった。
これらの期待に対して、導入後は、
工場でのデータ入力工数を37%削減(SAPでは30以上の画面展開操作をしていたところを、Excelシート1つの操作で実現)、ConnectPlusGTを使った開発では従来のABAPでのアドオンプログラム開発に比べて約1/10の開発コストでデータ連携を実現するなどの効果が見えてきた。
◆ 並行して進めていたSQLサーバとSAP品質管理モジュール(QM)のデータ連携プロジェクト
また、Excelを活用したSAP生産管理モジュール(PP)とのデータ連携プロジェクトと並行して進めていた、SQLサーバとSAP品質管理モジュール(QM)のデータ連携プロジェクトも予定通りに本稼働。
これまでSQLサーバにのみ格納され、特定の人しか参照できなかった品質に関する情報をSAP S/4HANAの品質通知にデータ連携することで、多くの関係者が直接参照できるようになり、品質情報の共有と見える化を実現した。
◆「ConnectPlusGT」の操作をマスターして他の機能も内製で追加設定
「ConnectPlusGT」を活用することで、S/4HANAの標準インターフェースを活用し、SAP S/4HANAと外部システムのインターフェースを実現できる。また、システム間のデータフローはGUIによりドラッグ&ドロップで記述でき、ノンプログラミングで転送途中の条件分岐やデータマージなどが実装できる。
A社は「ConnectPlusGT」の操作をマスターして本稼働後も追加機能を内製で次々に実装しており、社内運用で機能拡張できる「ConnectPlusGT」のメリットを存分に享受している。
今後も、SAP S/4HANAのインターフェースに「ConnectPlusGT」の活用範囲を内製で広げていきたいとのA社の展望について、クレスコ・イー・ソリューションはSAPとデータ連携の技術支援で伴走していく。
【なぜConnectPlusGTが選ばれたのか?】
▶ ExcelとSAP/4HANAとのデータ連携を双方向・リアルタイムで実現
▶ SAP S/4HANAの標準インターフェースを活用し、SAP S/4HANAと外部システム(Excel)とのインターフェースを実現
▶ ConnectPlusGTのGUIによるプログラムレスの開発手法