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S/4HANAへの移行に踏み出すアセスメントの必要性

【はじめに】

2015年、SAP ERP 6.0の後継となるSAP S/4HANAが発表されました。その後、2017年には企業のデジタルビジネスを支援するSAP Leonardoが発表されました。業務を支えるSoRとしてのSAP ERPと、SoEとして攻めの経営を支えるIntelligent Enterpriseの2つの異なる性格を持つソリューションは両輪として回り始めました。
とはいえ、SAP ERPを利用している多くの企業にとって目下の悩みは、SAP ERP 6.0を含むSAP Business Suite 7の製品保守サポートが2025年末で終了を迎える予定となっていることではないでしょうか。
現在使用しているSAP ERPをSAP S/4HANAにするために、どのようなメリットや方法があるのか。SAPパートナーが提供する各種移行のサービスは何が違うのか、何が自社に最適なのか。膨大にある情報の中から選定を進めるのは途方もない作業となるかもしれません。 SAP S/4HANAへ移行するメリットは、過去のSAP ERPデータを活用しつつ、これからのデジタルビジネスを支援するIoT、機械学習/AI、ブロックチェーン等の技術に柔軟に対応するシステム基盤を手に入れることができることが、一つにあります。

【ある製造業の事例に学ぶS/4HANAへの移行】

SAP ECC6.0を利用する、ある製造業様では、ハードウェア保守期限切が迫っていることと、中期経営計画の中で業務効率の改善と働き方改革の実現を目指していることを契機に、次期基幹システムの構築を検討していました。SAP S/4 HANAが有力候補として挙がる中、情報システム部門では、業務効率化につなげるための情報収集と、システム移行に伴う影響範囲の明確化、予算やスケジュールの計画策定が求められていました。そこで、現行機の標準機能の設定とアドオンプログラムの修正箇所、修正方法、修正工数を特定するアセスメント(事前検証)を実施することになりました。
アセスメントにあたっては、当社のSAP S/4HANA移行サービスMOAのアセスメントサービスを活用いただきました。他のサービスと比較して数多くの現場経験のナレッジを元にした報告書を入手できることと安価であることを評価してのことでした。

アセスメントでは、大きく分けて「標準機能」と「アドオンプログラム」の調査を行います。

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標準機能の調査では、SAP標準のアセスメントツール「Maintenance Planner」「Readiness Check」「SI-Checks」で、アドオン製品や業種別ソリューションの継続利用可否、ビジネスファンクションやアプリケーションコンポーネントの現行機の設定状況から判断して影響を受ける箇所が検出できました。これに加えて、影響する理由と、影響レベルをコンサルタントによる診断を行うことで修正方法を明確にできます。
アドオンプログラムの調査では、まず、現行機のアドオンプログラムの利用状況を可視化するためにSAP標準レポートを使用して、使用していないアドオンプログラムを洗い出しました。

なお、現行機はNon-UnicodeのSAP ECC 6.0であったため、SAP S/4HANA化に必須となるUnicodeへの変換が必要でした。従来、Unicode対応に関しては、実現化のなかで対象機能を全てテストし、その結果を元に修正箇所を特定、対応することがほとんどでしたので、実施には膨大な工数が必要でしたが、SAP S/4HANA移行サービスMOAのUnicode修正調査では、アセスメントにてユニコード化に必要な修正箇所を特定して対応案と修正工数が算出できるので、実現化におけるテスト工数の大幅な削減が可能となります。 その後、SAP標準ツール「Readiness Check」「SCI」を使用して、SAP S/4HANAでは廃止となる機能や構造変更によるアドオンプログラムの修正箇所を特定しました。
SAP S/4HANA移行サービスMOAのアセスメント結果は、SAP S/4HANA導入経験のあるコンサルタントによって報告書が作成され、移行の予算計画に必要なプロジェクト費用算出のための正確な情報が、わずか3週間という短期間で提出されました。

アセスメントの後続フェーズとして、いよいよSAP S/4HANA移行プロジェクトが開始となります。テクニカルマイグレーション(現行機能の踏襲)を前提としたプロジェクトでは、「準備」、「要件定義」、「実現化」、「移行」フェーズの順で進み、本稼働を迎えますが、SAP S/4HANA移行サービスMOAのアセスメントの報告書を活用することで、各フェーズの工数を短縮できます。

「準備」フェーズでは、システム運用方針やインフラ全体計画など、プロジェクトおよび本稼動後の大枠が決定されます。システム制約や要望をヒアリングした上で、ダウンタイム軽減の措置や、オンプレミスからクラウド環境への切り替え等が提案されます。「要件定義」フェーズでは、アセスメントで判明した現行業務からの変更が必要になる箇所について、システム要件が検討されます。この中で、修正対象となるアドオンプログラムと具体的な修正方法を決定していきます。「実現化」フェーズでは、移行前に必要となるシステム設定や、アドオンプログラムの最適化が実施されます。「移行」フェーズでは、前フェーズで定めた移行方針やテスト計画のもと、システムテストや移行リハーサル、本番移行が実施されます。本稼働直前に、環境移行と移行後のシステム設定を行うことで切り替えが完了します。このように進めることで、アセスメントから本稼働までを4カ月という短期間で実現することが可能となります。

【まとめ】

現行のSAP ERPをSAP S/4HANAにするためには、再構築するか移行するかの大きくは2つの選択肢があります。その選択を検討するためにはS/4HANAへの移行に際し、「現行機からSAP S/4HANAへの切り替えに、どれだけの範囲と影響がでるかを正確に把握すること」と、そこから「移行後のシステムをどのように活用していくかのゴールをイメージすること」が重要となります。

とはいえ、上述したように、SAP S/4HANA化に向けた影響調査には、アプリケーション、BASIS、インフラ領域が、それぞれ複雑に関係し合っています。ユーザ企業のみで、その多岐にわたる情報を収集するには直面する課題が多く、長くSAP ERPを利用しているユーザでは、アップグレードプロジェクトの経験を持つ技術者が減少している現実もあります。SAPパートナーでも、一部の領域、一部のフェーズに特化してサービス展開している場合はお客様の課題に対して構想から実現までを担うことは困難です。

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SAP S/4HANA移行サービスMOAのアセスメント(事前検証)サービスでは、膨大な情報を、ツールと多数の現場経験を持つコンサルタントの知識から、的確に切り分けていくことで必要な情報を短期間・低コストで提供しています。また、後続のマイグレーション(環境移行)、オプティマイゼーション(移行後の最適化)のサービスを一気通貫で提供することで、お客様の実現したい理想に対して、正しく確実にアプローチします。

「SAP S/4HANA化を検討したいが、なにから始めればよいか分からない」「予算取りのためのSAP S/4HANA移行にかかる概算費用が欲しい」といった要望のある場合は、まずは、短期間かつ低コストで実施可能なSAP S/4HANA移行サービスMOAのアセスメントサービスで第一歩を踏み出してはいかがでしょうか。

SAP S/4HANA移行サービスMOAは、SAP S/4HANA移行と利活用をご支援するサービスとして、2022年7月にリニューアルしました。

SAP ERP6.0ユーザの選択肢と実行プラン・各アセスメント・各プロジェクト実施方式
などを記載した詳細資料や事例資料をダウンロードして頂けます。

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