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【ConnectPlusユニコード開発】第7回 サロゲートペア

第3回のコラムで少し触れましたが、UTF-16では、サロゲートペアと呼ばれる仕組みで一部の特殊な文字を4バイトで符号化します。今回は、サロゲートペアに関する問題についてお話しします。

サロゲートペア

サロゲートペアは、UCS-2の2つの未使用領域0xD800?0xDBFF、0xDC00?0xDFFFを使い、1文字分のコードを2つ組み合わせて1つの文字を表す仕組みです。2つの領域には、それぞれ1,024文字分のコードがあるので、2つ組み合わせると最大1,024X1,024=1,048,576の文字を表現することが可能になります。

UTF-16は、UCS-2に収録されていないUCS-4の0群1?16面の文字集合をサロゲートペアを使って符号化します。したがって、UCS-2に収録された文字は、2バイト、それ以外の文字は、4バイトで符号化されることになり、UTF-8と同様に1文字ごとのバイト長が可変します。

JIS X 0213とWindows Vista

このような規定があるのですが、UTF-16の符号化で文字を2バイト固定長として処理するソフトウエアが少なからず存在するのが実情です。この背景には、サロゲートペアで符号化する文字(以下、サロゲート文字)のコンピューター入力が一般的に行われていなかったので、文字を2バイト固定長で処理しても問題がなかったという事情があります。
日本語の場合、半角カナ、全角かな、JIS第一、第二水準漢字、NEC拡張文字、IBM拡張漢字など、一般に使われる文字は、UCS-2に収録されています。したがって、例えばWindows XPでマイクロソフト標準のフォントと文字変換ソフト(以下、IME)を使っている限りは、UCS-2の範囲で文字入力が行われるので、UTF-16の符号化でサロゲートペアの対応を行う必要がありませんでした。しかし、JIS X 0213という新しい文字規格と、この規格に対応したWindows Vistaの登場によって、状況が大きく変わろうとしています。

JIS X 0213は、2000年に制定され、2004年に改正された日本語の文字コードに関するJIS規格です。JIS X 0213では、常用漢字表にない特殊な漢字を、第三水準漢字(1,259字)、第四水準漢字(2,436字)として新たに定義しました。
ユニコードでは、JIS X 0213の追加漢字の一部をすでにUCS-2に収録していましたが、JIS X 0213に完全対応するため、残りの漢字をUCS-4の0群2面、つまりUTF-16のサロゲート文字の範囲に追加しました。
一方、マイクロソフトは、Windows VistaでJIS X 0213対応を行うため、マイクロソフト標準の日本語フォントであるMSゴシックとMS明朝に追加漢字の字体を追加しました。また、IMEのJIS X 0213対応を行い、JIS X 0213の追加漢字を含んだ単語の文字変換を可能にしました。

JIS X 0213とWindows Vistaによって、パソコンでもサロゲート文字の入力が行われるようになります。したがって、Windows Vistaで動作するソフトウエアは、UTF-16の符号化でサロゲートペアの対応を行う必要があります。Windows XPやWindows 2000で正常に動作しているソフトウエアでも、サロゲートペアに未対応であれば、Windows Vistaでは正しく動作するとは限りません。

ConnectPlusとサロゲートペア

2007年2月現在、弊社製品ConnectPlus Unicodeは、サロゲート文字への対応が完全ではありません。現時点のSAP RFCライブラリーとデータ変換ソフトAnyTranの仕様により、サロゲート文字を正しく符号化できないのが原因です。

ConnectPlus Unicodeは、SAP社が提供しているユニコード対応のC言語ライブラリーを使って開発を行っています。このライブラリーのなかに、UTF-16で内部処理されたデータをファイルに出力する関数fwriteU、fputsUがあります。これら関数は、UTF-8ではなくCESU-8という特殊なエンコード方式を使って文字を符号化するので、サロゲート文字を正しく処理できません。

CESU-8は、プログラム内部での使用を前提にしたエンコード方式で、UTF-16のバイト列をすべて1文字2バイトで扱い、UTF-8と同一の変換ルールで符号化します(ユニコードコンソーシアム技術文書Unicode Technical Report #26参照)。このため、UCS-2に含まれる文字は、UTF-8とまったく同じバイト列で符号化されるのですが、サロゲートペア文字は、2文字扱いで処理されるので、正規のUTF-8とは異なるバイト列で符号化されます。
ユニコードコンソーシアムでは、データの外部出力でCESU-8を使用することを推奨していません。しかし、日本語、中国語、韓国語などの「特殊な」言語を除けば、UCS-2の文字集合で事が足りるので、UTF-8の代わりにサロゲートペアの例外処理が不要なCESU-8をエンコード方式に採用しているソフトウエアが存在します。SAPのファイル出力関数の場合でも、JIS X 0213追加漢字が文字列に含まれていなければ、UTF-8と全く同じバイト列で日本語を符号化できるので問題がありません。しかし、Windows Vistaが普及し、JIS X 0213の追加漢字が普通に入力されるようになれば、日本語を扱うSAPシステムでは、CESU-8の符号化による問題が発生するでしょう。

AnyTranは、株式会社データ・アプリケーションが販売するデータ変換ツールソフトです。EDIのデータ変換やシステム間の文字コード変換で非常に実績のあるソフトウエアで、ConnectPlusもSAPシステムのデータ形式IDocのデータ変換にAnyTranを採用しています。AnyTranは、UTF-8データを編集したり、シフトJISなどの他の文字コードに変換することが可能ですが、執筆時点(2007年2月)では、この機能で処理可能な文字に「UTF-8 UNICODE(UCS-2)日本語1?3バイト表現」という制約があります。UTF-16のサロゲート文字は、UTF-8の4バイト表現になるので、AnyTranでは、SAPユニコードシステムで入力されたサロゲート文字を正しく編集することができません。

このような理由から、ConnectPlus Unicodeは、現時点でサロゲート文字を正しく処理することができませんが、サロゲート文字を含むデータを送受信した場合でも、データの桁ずれなどによってデータ全体が破損することはありません。SAPの関数やデータ変換ツールがサロゲートペア対応されるまでは、一部のJIS X 0213追加漢字で文字化けが発生しますが、データの送受信が失敗することがないように設計されてります。

次回はConnectPlusの仕組みをお話しします

このコラムは、次回で最終回になります。最後に、当社が開発したConnectPlus Unicodeについてお話しします。よろしくお願いいたします。

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